【遺産分割禁止にされた!】 もう遺産分割はできないの?

はじめに

「亡くなった父の遺言書を開封したら、『死亡後3年間は遺産分割を行ってはならない』と書かれていた…」

「生活費や相続税の支払いに当てたいのに、本当に数年間も遺産を分けられないの?」

遺言書に「分割禁止」の指定があると、残されたご家族は「法律上、一切手をつけることができないのでは」と不安になるかもしれません。

結論からお伝えすると、相続人(および包括受遺者)全員の同意があれば、遺言による分割禁止があっても遺産分割協議を行うことができます。

今回は、民法上の規定と実務における取り扱いについてわかりやすく解説します。

1. そもそも「遺産の分割禁止」とは?

民法908条では、被相続人(亡くなった方)は遺言によって5年以内の期間を定めて、遺産の分割を禁止することができると定められています。

なぜ分割を禁止するのか?

被相続人が分割を禁止する理由としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 相続人同士の感情的な対立が激しく、冷静になるための冷却期間を置きたい
  • 事業承継や特定の財産処分についての準備期間が必要である
  • 未成年者の相続人が成年に達するまで待ちたい

2. 相続人全員が合意すれば「遺産分割」は可能!

「遺言者の意思は絶対ではないの?」と思われるかもしれません。

しかし、民法が定める遺産分割禁止の規定は、あくまで「相続人間の無用な争いを防ぐ」などの私的な利害を調整するためのものです。社会の公序良俗に反するような「絶対に変更できないルール(強行規定)」ではありません。

そのため、実務および通説では「利害関係人である相続人全員が望むのであれば、被相続人の指示よりも相続人全員の合意を優先してよい」とされています。

分割協議を進めるための条件

  • 相続人・包括受遺者の「全員」が同意していること(1人でも反対している場合は不可)
  • 全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成すること

3. 全員の同意が得られない場合は?(やむを得ない事由)

もし相続人の中に「遺言通り、期間が過ぎるまで分けたくない」と主張する人がいて全員の合意が得られない場合はどうすればよいでしょうか。

この場合でも、家庭裁判所に「遺産分割の審判」を申し立てるという方法があります。

相続人の生活困窮や、相続税の納税資金を確保するために早期の現金化が必要であるなど、「やむを得ない特別の事情」があると裁判所が認めた場合は、禁止期間内であっても裁判所の判断で遺産分割が許可されます。

4. 不動産の「相続登記」手続きはどうなる?

法務局での不動産の名義変更(相続登記)の手続きにおいても、遺言書に分割禁止の記載があるからといって即座に拒否されるわけではありません。

相続人全員が合意して作成した「遺産分割協議書」を添付して申請することで、問題なく相続登記を行うことが可能です。

まとめ:遺言書に「分割禁止」があってもまずは冷静に話し合いを

遺言書に「遺産分割を禁止する」という文言があっても、必ずしもその期間中ずっと遺産を放置しなければならないわけではありません。

  1. 相続人全員の合意がある →  いつでも遺産分割が可能
  2. 全員の合意はないが特別な事情がある → 家庭裁判所の審判で分割が認められる可能性がある

相続人同士での話し合いが難しい場合や、具体的な遺産分割協議書の作成・相続登記手続きについては、行政書士にご相談ください。