【遺言執行者】遺言書があるなら遺言執行者は絶対必要?

「亡くなった親の遺言書が出てきたけれど、そこに『遺言執行者』の指定がなかった…」

「自分が遺言書を作るとき、遺言執行者を決めておくべきなのだろうか?」

遺言書をめぐる手続きでよく耳にする「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」。まずは言葉の意味から整理してみましょう。

【遺言執行者とは?】

遺言書に書かれた内容を実現するために、必要な手続き(預貯金の解約、名義変更、遺産の分配など)を代表して行う権限を持った人のことです。遺言者の「遺志」を正しくカタチにするためのリーダー的な役割を担います。

では、遺言書がある場合、この遺言執行者を必ず選任しなければならないのでしょうか?

結論からお伝えすると、原則として必ず選任する必要はありません。ただし、遺言の内容によっては「法律上、選任が必須」となるケースがあるほか、任意の場合でも選任しておくことで相続手続きの負担が劇的に変わります。

この記事では、遺言執行者の選任が必要なケースと、選任することのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

1. 遺言執行者の選任は「必須」?

遺言書がある場合、原則として遺言執行者の選任は任意です。遺言執行者がいなくても、相続人全員が協力すれば預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを進めることができます。

しかし、以下の2点が遺言に含まれている場合は、法律上、遺言執行者の選任が必須となります(遺言書で指定がない場合、家庭裁判所で選任してもらう必要があります)。

① 子の認知(遺言認知)

生前に認知していなかった子を遺言によって認知する場合、市役所等へ認知の届出を行えるのは遺言執行者のみと定められています(民法第781条2項)。

② 推定相続人の廃除・廃除の取消し

特定の相続人(虐待や重大な侮辱を行った者など)から相続権を剥奪する手続き(廃除)を遺言で行う場合、家庭裁判所へ申し立てを行うのは遺言執行者の役割です(民法第893条)。

2. 遺言執行者を選任するメリット

「必須のケース」に当てはまらない場合でも、遺言執行者を定めておく(または家庭裁判所で選任してもらう)ことには大きなメリットがあります。

1. 手続きを単独でスムーズに進められる

通常、遺言執行者がいない場合、預貯金の解約や名義変更手続きには相続人全員の署名・捺印や印鑑証明書が必要になります。

遺言執行者がいれば、執行者単独の権限で金融機関や法務局での手続きを完結できます。

2. 相続人同士のトラブル・非協力的な人への対策になる

相続人のなかに「遺言の内容に納得がいかない」「連絡が取れない・協力してくれない」という人がいる場合、全員の書類を揃えるのは困難です。

遺言執行者が選任されていれば、他の相続人の協力を得られなくても法的に遺言の内容を執行できます。

3. 遺言者の意図(遺志)が確実に実現される

民法上、遺言執行者が選任されると、相続人は遺言の対象となった財産の処分(勝手な売却や贈与など)ができなくなります。遺言者の意図した通りに財産が分配されることが保証されます。

3. 遺言執行者を選任するデメリット

一方で、選任することによるデメリットや注意点もあります。

1. 専門家に依頼する場合は報酬(費用)が発生する

弁護士、行政書士、司法書士、信託銀行などの専門家に遺言執行者を依頼した場合(または死亡後に裁判所で選任された場合)、遺産総額に応じた執行報酬が発生します。

2. 相続人自身が遺言執行者になると負担が大きい

家族や特定の相続人を遺言執行者に指名することも可能です。この場合、専門家への報酬は抑えられますが、指定された相続人は「財産目録の作成」「各所での手続き」「他の相続人への通知・報告」など、多大な労力と責任を負うことになります。

3. 相続人間の感情的な対立を生むことがある

特定の相続人だけが遺言執行者に指定されていると、他の相続人から「財産を勝手に操作しているのではないか」と不信感を抱かれ、関係性がギクシャクするきっかけになることがあります。

4. まとめ:遺言執行者を選ぶべき?

状況おすすめの対応
相続人同士の仲が良く、協力が得られる必須ケースを除き、選任しなくても手続きは可能
相続人が多い・遠方に住んでいる遺言執行者を選任して手続きを一元化するのがスムーズ
相続人の中に非協力的な人がいる・疎遠選任を強く推奨(トラブルを未然に防ぐため)
第三者(受遺者)への遺贈がある選任を強く推奨(相続人の協力が得られにくいため)

遺言書を作成する際は、単に「誰に何を遺すか」だけでなく、「誰がその手続きを行うのか(遺言執行者)」までセットで考えておくと、残されたご家族の負担を最小限に抑えられます。

ご自身の相続環境に合わせて、行政書士への相談も検討してみてください。